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6月1
橋下徹大阪市長発言の根底は戦争と暴力の容認
2013.6.1
告発・・・歴史の逆行と人間への冒涜
弁護士 鈴木麻子(自由法曹団)さんの一文を紹介します。(女性のひろば 誌 7月号掲載)日本維新の会共同代表・大阪市長の橋下徹氏が、戦時中の旧日本軍の「慰安婦」制度は必要だった、沖縄米軍の性犯罪防止のために風俗業を活用すべきだなどと発言して、批判を受けている。
誤った歴史認識、女性蔑視に基づく発言であり、同氏は、発言を直ちに撤回し、尊厳を傷つけられた人たちにたいし謝罪するとともに公職を辞すべきだ。橋下発言は、決して、「タイミングや言い方が悪かった」り、「アメリカを怒らせてしまった」りしたから、失言とされるのではない。
その根底には、「戦争による暴力の容認」という価値観があり、それゆえ、厳しく非難されるべきなのである。橋下氏によれば、兵士は戦争で過酷なストレスにさらされているので、それを解消するため生身の女性を性欲のはけ口として用意する「必要がある」としている。確かに、昔も今も、兵士が過酷なストレスを受けていることは事実だ。
軍隊の任務は武力で敵を制圧することであり、さまざまな大義名分のもと、結局のところは「人殺し」を目的とした訓練を積む。
人間は通常の心理状態では冷静に殺人を行うことは難しいので、効率よく敵を殺せる兵士を作り上げるために、「殺人マシーン」となる訓練を行う。
米軍の新兵訓練所では、ためらいなく人を殺せるように自我や個性を捨て去る訓練、敵を同じ人間だと思わないようにする訓練などが組織的、系統的に行われている。あるドキュメンタリーでは、新兵を実践で使える「製品」にするのが我々の仕事だ、と教官がインタビューに答えていた。
そのような兵士たちのなかに、暴力的な性衝動をコントロールできずに、レイプなどの性犯罪に及ぶものがいることもまた事実だ。
しかし、だからと言って、兵士が受けた戦争のストレスは「慰安婦」や「風俗業」の女性を性のはけ口にして解消することが「必要」である、兵士は国家のために命をかけているのだから女性たちはそれを甘受すべきだ、ということには断じてならない。それは、暴力の連鎖にほかならない。「本音で話しましょう」などと言って、平然と、戦争や暴力を所与(初めから前提としていること)とし暴力の連鎖を容認する橋下氏には、暴力的な性衝動のはけ口にされる被害者への想像力が決定的に欠けている。
戦争に性暴力がつきものなのだとしたら、戦争や、兵士を「殺人マシーン」に仕立て上げる軍隊の存在自体を問題視すべきではないか。
武力によらない平和を希求する9条を含む現行憲法を「絶対平和という非現実的な共同幻想を押しつけた元凶である」(維新の会・綱領)と断じて、戦争による暴力を容認するような勢力が、影響力をもつようなことがあってはならないと強く感じる。
みなさんは、どう思いますか。
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